2010 年 7 巻 p. 95-104
本論では、声の概念が文化を媒介する上で果たす役割を論ずる。Bakhtin (1984 望月・鈴木訳 1995)の多声性の考え方に基づき、文化とコミュニケーション研究の鍵概念である複数性と関係性を記述するための声の媒介性を論じていく。個人、集団といった既成の枠組みや矛盾するという境界の壁にとらわれることなく異質性を分析するため、文化的に共鳴、不共鳴をしながら個人、集団、国家を超越したところで発せられる声の特徴をとらえながら、「グラウンド・ゼロ付近のモスク建設問題」を事例としてもちい、多文化における異なる声についての考察をおこなう。