抄録
運動機能障害のある患者が長期療養する筋ジストロフィー病棟では,ポジションに関する言葉をほとんど交わさずに,タイミングよく行うポジショニングが観察される.本研究では,この技がいかにして成り立っているのかを,この病棟で働く3人の看護師への参加観察と個別インタビューによって記述的に探求した.
このポジショニングは,患者の感覚や意図を「わかる」ことと,それを「する」ことを分けて語ることが困難な技であった.この接続は言語的および前言語的な層,すなわち,時間,患者の身体が示す物理的に観察できる標,かもしだされる雰囲気,身体に触れて感じとる感触,看護師-患者間で共有する苦痛-楽などの身体感覚,患者の姿に重なって見える未来の患者の動きや感覚の層で起こっていた.