抄録
輻射熱による実験的疼痛の閾値が真性ラベンダーオイルの芳香吸入によって上昇するか否かを検証することを目的として, 健常成人女性27名を対象に実験研究を行なった. 実験群は10分間の安静後に疼痛閾値を測定し, その後, 自然揮発させた真性ラベンダーオイルの芳香を自然呼吸で10分間吸入して再度疼痛閾値を測定した. 対照群は芳香の無い条件で同様の実験を行った. また被験者の真性ラベンダーの香りに対する好みを7段階の順位尺度を用いて評価し, 疼痛閾値の変化率と香りの嗜好の程度との関係を検討した. その結果, 芳香吸入によって疼痛閾値は有意に上昇し, 真性ラベンダーオイルの芳香の吸入には疼痛閾値を上昇させる効果があることを確認した. また, 香りに対する嗜好の程度と閾値変化の割合との間には有意な相関関係は認められなかったことから, その効果は薬理的作用が主であることが推測された. 本研究により, 芳香療法が疼痛緩和の看護介入として有用であることを示唆できた.