抄録
近年, 口腔外科領域で正常な消化管を持った術後患者に対して経管栄養を施行する際, 400ml/h以上の高速注入をしても, 安全に注入できることを示唆する臨床研究が複数ある. これらの研究の示唆を確認すべく, 歯科病棟に入院中の口腔外科術後患者で, 消化器が健康で大きな既往のない経管栄養適応の成人7名を対象に, 1名について5~7日間, 経管栄養の注入速度 ・ 副作用の出現 ・ 患者の感覚について実態調査を行なった. 注入にはシリンジまたはイリゲータが使用されており, 延べ42データのうち, 注入速度500ml/h未満は14%, 500~1,000ml/hは29%, 1,000ml/h以上は57%であった. 調査期間中, 深刻な副作用は出現しなかった. 調査結果は, 近年の臨床研究が示す以上の高速注入が安全に実施されている実態と, 注入速度と副作用の関連は認められないことを示した.