抄録
床上安静中の患者の中に, ベッド上で自尿が得られない人がいる現状があるが, 自然排尿を促す看護ケアは現在確立されていない. 本研究は, トイレとベッド上での排尿時の自律神経活動と, ベッド上で排尿があった場合となかった場合の自律神経活動の違いを, 心拍変動を用いて明らかにすることを目的に行った. 24~37歳の健康な成人女性 12名の, 排尿前, 排尿動作中, 排尿後それぞれ 5分間ずつの心拍変動スペクトル解析を行った. その結果, トイレでの排尿では, 排尿前と比べHF (副交感神経指標) は変化せず, LF/HF (交感神経指標) は有意に上昇していた. ベッド上で排尿があった場合には HFは有意に上昇し, LF/HFは変化しなかった. ベッド上で排尿がなかった場合は HFは変化せず, LF/HFは有意に上昇していた. 床上排尿はトイレでの排尿に比べ HFは有意に上昇していた. また, ベッド上で排尿があった場合はなかった場合に比べ, 排尿時に HFが有意に上昇し, LF/HFは有意に低下していた.