2020 年 25 巻 1 号 p. 60-
【要旨】ヘニパウイルス感染症の神経病態には2つの特徴がある。第1に、neuropathogenesis に「血管炎」と「脳実質への感染」という2つの側面がある。ウイルスの主要な標的は血管内皮細胞であり、これにより全身感染が引き起こされる。第2に、感染後 10 週以上を経て発症する「遅発性脳炎」や、脳炎を発症・寛解後に「再発性脳炎」が認められる。同じパラミクソウイルス科の麻疹ウイルスでも、数年の潜伏期間を経て発症する亜急性硬化性全脳炎(subacute sclerosing panencephalitis、以下 SSPE)が知られているが、ヘニパウイルスの遅発・再発性脳炎の研究は SSPE ほど進んでいない。本稿では、本症の神経病態について、近年の研究成果をまじえて概説する。