2022 年 27 巻 1 号 p. 159-
【要旨】76 歳女性、4 日前からの異常行動と左片麻痺で来院した。来院時に発熱を認め、頭部 MRI では中枢神経の線維路に沿って一部造影効果を伴った病変を認めた。血液検査での炎症反応上昇は軽度で、体幹部 CT で明らかな熱源はほかに認めず、頭部 MRI 所見から脳膿瘍、悪性リンパ腫を鑑別にあげ抗菌薬投与を開始した。入院時の血液培養から Listeria monocytogenes が検出されたが、髄液培養は陰性であり、診断確定のため脳生検を行い腫瘍性疾患が否定できたため Listeria monocytogenes 脳膿瘍と診断した。抗菌薬を約6 ヵ月間投与して髄液と頭部 MRI の所見の改善を認め、臨床的にも改善して自宅退院した。Listeria monocytogenes は中枢神経では神経線維路に沿って移動することが知られ、このような頭蓋内の特徴的な分布パターンを呈することが知られている。この特徴を認識することで本疾患の早期診断につながり転帰を改善できる可能性がある。