NEUROINFECTION
Online ISSN : 2435-2225
Print ISSN : 1348-2718
シンポジウム2
自己免疫性脳炎の診療のコツ
中嶋 秀人
著者情報
ジャーナル フリー

2022 年 27 巻 1 号 p. 64-

詳細
抄録

【要旨】抗 N-methyl-d-aspartate 型グルタミン酸(NMDA)受容体抗体を含む神経細胞表面抗体が関与する自己免疫性脳炎の臨床スペクトラムが解明されるにつれ、自己免疫性脳炎の診断機会が著しく増加している。一般的に自己免疫性脳炎は免疫療法に良好な反応性を示すため、早期の抗体診断にもとづく免疫療法の導入が推奨され、自己免疫性脳炎の診断アルゴリズムも提唱されている。自己免疫性脳炎の診断として、抗 NMDA 受容体抗体など個々の神経細胞表面抗体の同定には cell-based assay(CBA)が有用であるが、自己免疫性脳炎の幅広い臨床スペクトラムにおいては既知の CBA が陰性のことも少なくないため、CBA の相補的検査であるラット脳凍結切片を用いた免疫染色である tissue-based assay(TBA)と初代海馬培養細胞による抗体診断を併用した神経抗体スクリーニングを含む診断アルゴリズムの構築が求められる。実際の臨床の現場においては、TBA を含む抗体スクリーニングで陽性を確認したのち CBA の結果を待たずすみやかに免疫療法を導入する治療アルゴリズムが適用できる可能性がある。近年、スペインにおける単純ヘルペス脳炎コホートを対象とした前向き追跡調査では、単純ヘルペス脳炎後 27%に自己免疫性脳炎が続発し、全例で神経細胞表面抗体が陽性であることが確認されている。単純ヘルペス脳炎を含めた神経感染症と自己免疫性脳炎の双方をあわせて理解したうえで、自己免疫性脳炎の新しい診療アルゴリズムについて考察する。

著者関連情報
© 2022 日本神経感染症学会
前の記事 次の記事
feedback
Top