NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
血管内冷却システムを使用した重症頭部外傷に対する積極的平温療法の初期経験
中尾 隼三中居 康展池田 剛西平 崇人小沼 邦之高田 麻耶石川 栄一上村 和也松村 明
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2018 年 23 巻 1 号 p. 24-31

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抄録

 重症頭部外傷sTBI(severe traumatic brain injury)における急性期高体温は二次性脳損傷を助長し,患者転帰の悪化に大きく影響する.したがって,sTBIの急性期高体温に対して適切な体温コントロールを行うことは非常に重要である.従来体温管理には水冷式ブランケットなどの皮膚表面冷却システムが使用されてきたが,今回我々は重症頭部外傷における急性期高体温に対して,血管内冷却システムの一つであるサーモガードシステム・COOL LINE®カテーテルを用いた体温管理を行ったのでその有効性と課題を報告する.【対象および方法】2016年6月から12月までの期間に,sTBIの急性期高体温に対して積極的平温療法を行った7例を対象にした.全例24時間以内に減圧開頭術が施行され,受傷後72時間以内に38℃以上の高体温を認めた.5例で血管内冷却システム・サーモガードシステム・COOL LINE®カテーテル(CL)を使用し,2例で皮膚表面冷却システム・水冷式ブランケット(BL)を使用した.目標体温達成時間はCL群で151.2±48.6(37‒211)分,BL群で765.0±75.0(690‒840)分で,CL群の方が有意に早く目標体温を達成することができ,安定した体温管理が可能であった.退院時GOS(Glasgow Outcome Scale)は,CL群で2.8±0.7,BL群で3.5±0.5で,有意差は認めなかった.sTBI後の高体温の管理については,迅速な目標体温達成と,安定した体温管理が重要である.今回我々が使用した血管内冷却システムは迅速な目標体温への到達,かつ安定した体温管理が可能なデバイスと考えられた.その一方で,深部静脈血栓症,カテーテル関連感染症などカテーテル関連合併症のリスクもあり,血管内冷却システムがsTBIの体温管理に有効であることを示すためには,さらなる症例の蓄積が必要である.

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© 2018 日本脳神経外科救急学会
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