NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
23 巻, 1 号
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  • Mitsuru Honda, Ryo Ichibayashi, Ginga Suzuki, Yukitoshi Toyoda, Masayu ...
    2018 年 23 巻 1 号 p. 1-9
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

      Acute subdural hematoma (ASDH) represents a major clinical entity in severe traumatic brain injury (sTBI). sTBI is reported to cause cerebral circulatory disturbances at the acute stage. Here we focused on the cerebral circulation of ASDH patients, evaluated the absolute left‒right difference between cerebral hemispheres, and compared the cerebral circulation between groups with and without favorable outcomes. We retrospectively reviewed the cases of 31 patients with ASDH. Xenon‒computed tomography (Xe‒CT) and perfusion CT had been performed simultaneously in each patient to evaluate the cerebral circulation on post‒injury days 1‒3. The cerebral blood flow (CBF) was measured by Xe‒CT and the mean transit time (MTT) was measured by perfusion CT, and the cerebral blood volume (CBV) was calculated. A significant absolute difference in cerebral circulation between the hemispheres among different types of TBI was observed in the patients’ MTT values. There was no significant difference in these parameters between left‒right hemispheres with ASDH among the favorable outcome group and unfavorable group. There were no significant differences in age, Glasgow Coma Scale score at the onset of treatment, CBF, or CBV. Only the MTT was significantly different between the favorable outcome and unfavorable outcome groups. The circulatory disturbance in ASDH patients occurs diffusely despite the focal injury. Additionally, in patients with unfavorable outcomes, the circulatory disturbance is worse than that in favorable patients. We must adopt a treatment strategy appropriate to the pathophysiology of the different TBI types.

  • 稲次 基希, 戸原 玄, 古屋 純一, 沼沢 祥行, 三木 一徳, 泉山 肇, 水口 俊介, 前原 健寿
    2018 年 23 巻 1 号 p. 10-16
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     脳卒中患者における口腔内機能低下,口腔内環境悪化は肺炎等の合併により患者のADLや予後を悪化させる.これまで脳卒中患者に対する歯科介入は,急性期および慢性期の口腔ケア,嚥下機能評価とリハビリテーションにより肺炎予防や経口摂取率の向上等に寄与すると報告されている.しかし従来の歯科介入は各施設単位で散発的であり,転院に伴い連続性を失う問題点がある.当院は急性期より積極的な歯科介入をおこなうとともに,回復期,維持期においても連続したケアが維持できるよう周囲の医療機関との歯科連携に取り組んでおり,その効果と現状,問題点を脳卒中診療医の立場から報告する.院内においては入院直後より全例歯科介入をおこない,入院後3日以内に歯科医師による専門的口腔ケアを開始,必要に応じて義歯調整や抜歯をおこなった.また嚥下機能評価をあわせておこない,言語聴覚士と連携し早期の経口摂取に取り組んだ.さらに口腔ケアの均質化を図るために口腔ケアマニュアルを作成,勉強会を繰り返し,看護師でも毎日の口腔ケア維持を可能にした.近隣の回復期施設医師,歯科医師と連携し,評価方法,ケア方法の共通化を目指した人的交流を行うとともに,歯科情報に関する転院時の診療情報提供を強化した.維持期施設において歯科医師の介入は困難であることから,作成した口腔ケアマニュアルに基づいて,口腔ケア方法の指導を行った.急性期には肺炎発生率の減少を認めた.また回復期施設への連携により,困難であった歯科治療の継続も可能な症例がみられた.一方で当院のような都市型施設では患者の転院先が多岐にわたり,個別の病院間連携のみでは,歯科連続介入が可能な症例は限られた.脳卒中患者に対する積極的な歯科介入は,口腔衛生,口腔嚥下機能の観点から有用と思われた.一方各施設単独での努力による施設間連携には限界があり,全国的な医科歯科連携の継続は困難と思われる.リハビリテーションと同様に脳卒中パスへの反映や,診療報酬への反映などの制度的な取り組みが必要であると思われる.

  • 横田 和馬, 反町 隆俊, 馬場 胤典, 厚見 秀樹, 松前 光紀
    2018 年 23 巻 1 号 p. 17-23
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     小児急性硬膜下血腫(ASDH)は成人ASDHと異なり,軽微な外傷後でも転帰不良になる症例が少なくない等の特徴がある.転帰に影響する因子をあきらかにすることは,予後改善のための対策に重要である.本研究では,小児ASDHの転帰の予測因子を求め,さらに特に重要な予測因子について検討した.2000年~2016年に入院した6歳以下の小児で,CT上ASDHと診断され,入院加療した患者を後向きに評価した.調査期間に入院した6歳以下のASDHは70例であった.転帰は良好49例(70%),不良21例(30%)であった.転帰不良の予測因子は多変量解析で,CTやMRIでの虚血巣(cerebral infarction following ASDH: CIASDH)の出現だけであった(p<0.05).CIASDHの出現は,多変量解析を用いると,けいれん,初診時意識障害,正中構造偏位3mm以上(p<0.05)であった.けいれんと3mm以上の正中構造偏位の両者がある10例では,CIASDHが9例(90%)に出現していた.小児ASDHではCIASDHの出現が転帰に重大な影響を与える.小児ASDHでは,特に意識障害,けいれん,正中構造偏位があるときは,CIASDHを考慮して説明と治療を行うことが重要と考える.

  • 中尾 隼三, 中居 康展, 池田 剛, 西平 崇人, 小沼 邦之, 高田 麻耶, 石川 栄一, 上村 和也, 松村 明
    2018 年 23 巻 1 号 p. 24-31
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     重症頭部外傷sTBI(severe traumatic brain injury)における急性期高体温は二次性脳損傷を助長し,患者転帰の悪化に大きく影響する.したがって,sTBIの急性期高体温に対して適切な体温コントロールを行うことは非常に重要である.従来体温管理には水冷式ブランケットなどの皮膚表面冷却システムが使用されてきたが,今回我々は重症頭部外傷における急性期高体温に対して,血管内冷却システムの一つであるサーモガードシステム・COOL LINE®カテーテルを用いた体温管理を行ったのでその有効性と課題を報告する.【対象および方法】2016年6月から12月までの期間に,sTBIの急性期高体温に対して積極的平温療法を行った7例を対象にした.全例24時間以内に減圧開頭術が施行され,受傷後72時間以内に38℃以上の高体温を認めた.5例で血管内冷却システム・サーモガードシステム・COOL LINE®カテーテル(CL)を使用し,2例で皮膚表面冷却システム・水冷式ブランケット(BL)を使用した.目標体温達成時間はCL群で151.2±48.6(37‒211)分,BL群で765.0±75.0(690‒840)分で,CL群の方が有意に早く目標体温を達成することができ,安定した体温管理が可能であった.退院時GOS(Glasgow Outcome Scale)は,CL群で2.8±0.7,BL群で3.5±0.5で,有意差は認めなかった.sTBI後の高体温の管理については,迅速な目標体温達成と,安定した体温管理が重要である.今回我々が使用した血管内冷却システムは迅速な目標体温への到達,かつ安定した体温管理が可能なデバイスと考えられた.その一方で,深部静脈血栓症,カテーテル関連感染症などカテーテル関連合併症のリスクもあり,血管内冷却システムがsTBIの体温管理に有効であることを示すためには,さらなる症例の蓄積が必要である.

  • 松本 洋明, 櫻井 靖男, 花山 寛朗, 岡田 崇志, 南 浩昭, 増田 敦, 富永 正吾, 宮地 勝弥, 山浦 生也, 吉田 泰久, 吉田 ...
    2018 年 23 巻 1 号 p. 32-38
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     慢性硬膜下血腫に重度の意識障害や瞳孔異常といった脳ヘルニア兆候を呈することは稀である.そこで我々は2010年1月から2015年10月まで当院で手術療法を行った初回慢性硬膜下血腫492例のうち,初診時に切迫ヘルニア状態を呈した患者の臨床的検討を行った.492症例中11症例(2.2%)に初診時に脳ヘルニア兆候を認めた.脳ヘルニア兆候を呈した群と呈さなかった群との比較では,ヘルニア兆候を呈した群で統計学的有意差をもって,高齢,他疾患で他院入院中の患者が多く認められた.多変量回帰解析でも他疾患で他院入院中であることが唯一の独立した危険因子であった.緊急手術を行ったにもかかわらず,11症例中6症例で脳ヘルニアが完成した.脳ヘルニアが完成した群と回避できた群での比較検討では,統計学的有意差をもって頭部外傷歴が明白,CTで迂回槽の描出が不良であった.予後に関しては脳ヘルニアの完成の有無にかかわらず,初診時に脳ヘルニア兆候を呈すると予後は不良であった.今回の検討では,切迫ヘルニア状態の症例が他疾患で入院中に発見されている症例が多かったことから,高齢者で最近の頭部打撲の既往がある場合は慢性硬膜下血腫の発生を念頭に置くことを他科医師にも啓蒙する必要があると思われた.

  • 早瀬 睦, 川内 豪, 尾市 雄輝, 服部 悦子, 佐野 徳隆, 宮腰 明典, 戸田 弘紀
    2018 年 23 巻 1 号 p. 39-44
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     recombinant tissue plasminogen activator(rt‒PA)静注療法も血栓回収療法も治療可能時間内であっても再開通が早期に達成されるほど良好な転帰が期待できるため,いかに早く専門的かつ高度な医療を受けられる病院を受診することが重要となっている.しかしこの時間的制約の厳しさからrt‒PA静注療法あるいは血栓回収療法の恩恵を受けられない患者が現在もなお多数存在している.発症から病院到着までの時間短縮を目指すために,2014年から2015年までに当院脳卒中ケアユニット(Stroke Care Unit: SCU)に入院した患者について,発症から来院までに要した時間,来院手段,受診の動機,来院までに時間を要した理由について診療録をもとに後方視的に調査した.2014年10月1日より2015年9月30日までに当院SCUに入院した患者数は384名,うち69%が脳梗塞であった.51%は発症から8時間以上経過して来院されており,4.5時間以内に来院されたのは30%であった.rt‒PA静注療法もしくは血栓回収療法は11%に施行されていた.救急車の利用は来院までに要した時間が短いほど利用率が高い傾向にあるが,それでも63%であった.また患者本人以外の他者が異常を指摘し,受診を指示したケースが45~60%を占めていた.地域住民が脳卒中を疑う知識をもち,急を要する疾患であることを周知することが理想であるが,今回の結果からはまだ十分であるとはいえず,今後検証を続けていく必要がある.

  • 和久井 大輔, 伊藤 英道, 小野寺 英孝, 森嶋 啓之, 大塩 恒太郎, 田中 雄一郎
    2018 年 23 巻 1 号 p. 45-48
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     動脈瘤塞栓術を行った228例を年齢,性別,部位,大きさ,破裂の有無,重症度,ネック形成バルーンの拡張の有無と合併症との関連性を検討した.虚血性合併症は10例(4.3%)で出血性合併症は6例(2.6%)であった.虚血性合併症はバルーン使用例で有意に多く永続的合併症は認めなかった.出血性合併症は全例破裂例に生じ死亡と永続的合併症を1例ずつ生じた.フィニッシングコイル挿入時に出血した2例はネック形成用バルーンの拡張のみで止血し良好な転帰であった.全体の合併症は少なく要因としてアルガトロバンの投与や慎重な手術操作が挙げられるが出血性合併症の転帰は不良でありさらなる手術手技の向上が望ましい.バルーン拡張例では抗血小板薬やヘパリン化の強化などを行うべきと考えられた.

  • 和田 孝次郎, 大谷 直樹, 豊岡 輝繁, 竹内 誠, 富山 新太, 戸村 哲, 山本 祐太朗, 熊谷 光祐, 藤井 和也, 森 健太郎
    2018 年 23 巻 1 号 p. 49-53
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     内頚動脈瘤クリッピング,特に傍前床突起部脳動脈瘤において,頚部での内頚動脈確保は安全に手術を行うために必須のテクニックである.しかしながら日本人の頚動脈分岐部は欧米人にくらべ1椎体高い傾向にあることが知られており,露出方法に習熟しておく必要がある.我々が行っている方法について報告する.頭部はクリッピングに適した角度に回旋する,術側と反対側に頚部をやや傾け頚部の皮膚にやや緊張を持たせる,術側肩下枕は頚部の操作する際に肩が邪魔になってしまうため挿入しない.皮膚切開は甲状軟骨上縁を走行する皮皺を利用する,この皺は後上方,乳様突起に向かうことが多く,頚動脈分岐の高さに応じ乳様突起に向かって皮膚切開を伸長することも可能である,また術後の美容上利点がある.この皺に沿い胸鎖乳突筋前縁2cm前方から後方に約5cmの皮膚横切開を置く.切開部より頭側の皮膚を胸鎖乳突筋の表面で剝離して皮膚フラップを作成し,胸鎖乳突筋前縁を確認したのち頚動脈三角に侵入する.頚動脈三角の一辺を構成する顎二腹筋後腹を十分に露出することが安全に頚動脈を露出するうえで重要なポイントと考える.露出後に頚動脈鞘を剝離翻転して内頚動脈を確保する.20例でこの方法に従って内頚動脈確保を行った.反回神経麻痺,舌下神経麻痺等の術後脳神経麻痺症状を合併した症例はなかった.術後問題となるような瘢痕を残した例は認めなかった.

  • 大藏 裕子, 重森 裕, 福田 健治, 野中 将, 岩朝 光利, 井上 亨, 石倉 宏恭
    2018 年 23 巻 1 号 p. 54-58
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     出血発症の小児もやもや病は頻度が少なく,予後が不良である.今回,出血発症の小児もやもや病に対して,血腫除去ならびに頭蓋内圧減圧を目的に,緊急神経内視鏡手術を実施し,救命し得た一例を経験したので報告する.症例は13歳女性.突然の頭痛と全身性痙攣を主訴に救急搬送となった.当センター搬入時の意識レベルはGlasgow Coma Scale (GCS) 6 (E1V1M4),瞳孔不同と痙攣重積を認めた.頭部単純CTで右前頭葉に脳出血を認め,正中偏位を呈していたため,同日緊急で内視鏡下血腫除去術を施行した.術後,十分な血腫除去が得られ,瞳孔不同の改善も認めた.術後に施行した脳血管造影検査にて両側内頚動脈閉塞およびもやもや血管が認められ,出血発症の小児もやもや病と診断した.2週間の集中治療を行い,第38病日に右側,第58病日に左側の間接バイパス術を施行した.患児はManual Muscle Test 2/5の左片麻痺が残存したが,意識レベルはGCS11 (E4VTM6) まで改善を認め,リハビリテーション目的に転院となった.発症1年後はmodified ranking scale 3まで改善した.小児もやもや病に合併した脳出血に対する神経内視鏡下血腫除去術は,開頭術と比較して低侵襲で迅速に実施可能であることから有用である可能性がある.

  • 吉山 直政, 疋田 茂樹, 越後 整, 高松 学文, 小倉 真治, 山下 典雄
    2018 年 23 巻 1 号 p. 59-64
    発行日: 2018年
    公開日: 2018/09/06
    ジャーナル オープンアクセス

     頭部への直撃雷により多彩な頭蓋内損傷を呈し,持続する意識障害と進行性の脳腫脹を来した1例を経験した.症例は48歳の男性.雷雨の中,自転車で走行し,直撃雷を受け,意識障害で救急搬送された.接触時,意識レベルはGlasgow Coma Scale4点,血圧174/110mmHg,脈拍114回/分,呼吸数26回/分,腋窩温34.6℃で,接触時から当院に搬送されるまで心肺機能不全を示唆する所見はなかった.身体所見では,左後頚部腫脹と左耳孔出血を認め,左頚部,胸腹部,会陰部,左上肢のII度熱傷創を認めた.搬入時の画像検査では,頭部CTで頭頂部を主体とする左急性硬膜下血腫とびまん性脳腫脹,くも膜下出血,両側被殻出血および気脳症を認めた.また,胸部CTでは両側肺挫傷を認めた.左穿頭血腫除去術を行うも,意識障害を伴う難治性の脳腫脹が持続したため,保存的加療を行い,第11病日に死亡した.本症例の脳腫脹が進行性であった理由は,雷電流が頭蓋内を通電して生じたジュール熱や電気的エネルギーだけでなく,頭部で生じた沿面放電と続発する爆損傷が生じたため,と考えられる.湿潤環境下で,雷電流の流入口が頭部である雷撃傷患者では,心肺機能に異常がなくとも,爆損傷による頭蓋内損傷と続発する脳腫脹が致命的になることを念頭におき,治療を行う必要性が示唆された.

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