NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
急性期血栓回収療法における再開通時間短縮への取り組み
—当院における問題点と新設脳卒中センターの課題—
前岡 良輔中川 一郎和田 敬福島 英賢尾本 幸治山田 修一本山 靖杉江 和馬吉川 公彦中瀬 裕之奥地 一夫
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2018 年 23 巻 2 号 p. 88-93

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抄録

 脳梗塞急性期による血栓回収療法の有効性は周知の事実であり,血栓回収機器の進歩により再開通率が改善した現在,発症から再開通までの時間短縮が治療予後を左右する大きな要因となっている.当院では2017年10月に脳卒中センターを開設した.そこで開設前の2016年10月から2017年9月までの1年間における当院で急性期血栓回収療法を行った26症例に対して来院様式,再開通時間,治療予後等に関して後方視的に検討を行うことで,当院における急性期血栓回収療法の問題点と新設脳卒中センターのこれからの課題についての検証を行った.症例の内訳は男性15例(58%),平均年齢は75.7±12.2歳(40‒91歳)であった.院内発症4例,他院より紹介8例(2例はdrip and ship),救命センターへ直接搬送が14例(54%)であった.血栓溶解療法は14例(54%)に施行された.来院時NIHSSは17.7±6.6,TICI 2b以上の再開通は21例(81%)で認められた.Door to puncture time(D2P)時間は121.7±54.9 min,Puncture to recanalization time(P2R)時間は44.8±23.5 minであった.本シリーズの前期に比し後期ではP2R時間の有意な短縮(p=0.005)を認めたが,D2P時間の短縮は認めなかった.つまり,急性期血栓回収療法の増加に伴い,技術的要素のP2R時間の短縮は達成されているが,制度・システム的要素のD2P時間の短縮は不十分であった.脳卒中センター開設は医師間及びコメディカルスタッフとの連携を含めた院内体制強化につながりD2P時間の短縮に寄与すると考えられる.

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© 2018 日本脳神経外科救急学会
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