2019 年 24 巻 1 号 p. 39-44
発症8時間以内の急性期脳梗塞に対する血栓回収療法は推奨されているが,無効例に対する後療法は確立されていない.今回我々は,非心原性主幹動脈閉塞症に対して発症72時間以内にSTA‒MCAバイパス術を施行した症例についてその治療成績を報告する.2010年9月から2017年8月までの間,緊急バイパス術を施行した14例を対象にretrospectiveに臨床・治療成績を検討した.手術適応は,発症後8~72時間でNIHSSは4点以上で進行性脳梗塞であり,主幹動脈(IC,M1)の閉塞,責任病巣における皮質梗塞が1/3以下でperfusion‒diffusion mismatchがみられる症例とした.年齢は43歳から82歳(平均70歳),男性9,女性6例であった.入院時平均NIHSSは9.5で中大脳動脈(M1)閉塞7例,内頚動脈(起始部)閉塞・狭窄7例であった.脳梗塞発症から手術までの時間は12から72時間(平均36時間)であった.全例バイパス血管の開存を認め,脳梗塞領域の増大はみられず,出血性併発症はみられなかった.退院時転帰はGR2例,MD6例(予後良好群57.1%),SD5例,D1例(予後不良群42.9%)であった.死亡例はADL自立していたものの消化管出血が原因であった.【結 論】 急性期STA‒MCAバイパス術は,厳密な手術適応のもと,急性期血行再建術のひとつの選択肢として考慮しても良い治療であろうと思われる.