2019 年 24 巻 1 号 p. 32-38
【目 的】 頭部外傷患者のバイオマーカーの有用性は十分に解明されてない.今回血清リン酸化ニューロフィラメント(pNF‒H)に着目し,頭部外傷患者の臨床所見及び転帰との関連を検討した.【対象と方法】 2015年7月から2016年7月に頭部外傷で入院中に末梢血採取及び頭部MRI検査を行った患者14例の搬送直後と72時間後の末梢血から免疫学的測定方法(ELISA法)にて血清pNF‒H濃度を測定した.頭部MRI検査は受傷後2‒80日(中央値11日)に施行した.血清pNF‒H値と頭部MRI所見及び6ヶ月後の転帰との関連を検討した.【結 果】 年齢中央値は61.5歳で,男性9例,女性5例,搬入時GCS(Glasgow Coma Scale)中央値は7.5であった.頭蓋内病変は,急性硬膜下血腫3例,急性硬膜外血腫1例,外傷性クモ膜下出血5例,脳挫傷5例であった.退院時転帰は転帰良好群が9例,転帰不良群は5例であった.6ヶ月後転帰は良好群が11例,不良群が3例であった.血清pNF‒HはDay 0に3例(平均6.5 pg/ml),Day 3に5例(平均31.7 pg/ml)で検出された.Day 3に血清pNF‒Hが検出された患者は高い特異度を持って脳実質内に拡散強調画像(DW‒MRI)で高信号を示した.また血清pNF‒Hが検出された患者において6ヶ月後の転帰不良が多かった.【結 論】 頭部外傷患者の72時間後の血清pNF‒Hは脳損傷を判別するバイオマーカーとなる可能性が示唆された.