2019 年 24 巻 1 号 p. 55-59
【はじめに】 頭部外傷は小児の死亡原因で一番多く,一部は虐待によるもので重篤な後遺症を残す事がある.頭部外傷を来した被虐待小児に対し,頭蓋内圧Intra Cranial Pressure(以後ICP)モニタリングを行いながら治療を行った一例について報告する.【症 例】 5ヶ月女児,定期健診に受診されないため保健師が自宅に連絡したところ,母が児の様子おかしいと訴えたため救急受診を指示した.受診時顔色不良と右上下肢間代性痙攣を認め,CTにて両側硬膜下血腫を認めた.ミダゾラム・フェノバルビタールで鎮痙・鎮静を図り,児童相談所通告後に母児分離目的で他府県である当院へ転送となった.MRIで両側硬膜下血腫とびまん性軸索損傷を疑わせる所見を認め,大泉門膨隆が続くためICP管理目的でICPセンサーを留置し,マンニトール・ミダゾラムで治療を行った.ICPをみながら薬剤減量・中止を行いICP亢進せず安定したため8日目にセンサーを抜去した.3ヶ月後に哺乳できるようになったため施設退院となった.【考 察】 小児のICP亢進に対する忍容性は低く,特に虐待による頭部外傷は予後不良である.ICPセンサーを用いた積極的なICP管理は有用と考えられた.【結 語】ICP亢進が疑われた被虐待児に対しICP測定を行った.ICPモニタリングは薬物治療を行う上で有効な指標であった.