NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
脳卒中の急性期診療におけるドクターヘリの役割
福田 真紀太田 剛史西田 武司竹村 光広松岡 賢樹政平 訓貴岡田 憲二津野 隆哉
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キーワード: air ambulance, acute stroke, rt‒PA
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2019 年 24 巻 2 号 p. 116-121

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抄録

 ドクターヘリには,搬送時間の短縮だけでなく医師が現場に赴くことで早期に治療を開始できる,という利点がある.当科では,救急科と協同して,フライトドクター接触時から治療開始可能な急性期脳卒中診療プロトコールを運用している.今回,ドクターヘリを活用したプロトコールについて報告する.当院では2011年4月からドクターヘリを活用した急性期脳卒中診療を開始した.フライトスタッフは現場でCPSS(Cincinnati Prehospital Stroke Scale),最終健常時間を確認し,ルート確保と同時に採血を行った.ヘリ帰着後,待機スタッフは院内移動中に,神経所見の詳細評価と採血スピッツの検体検査室への提出を行いつつ患者を直接CT(Computed Tomography)室に搬入した.搬入後は脳神経外科医が中心となって画像評価や治療を迅速に行った.運用開始から2017年3月までのドクターヘリを活用した急性期脳卒中診療を解析し,脳卒中病型の割合,遺伝子組み換え組織プラスミノゲンアクチベータ(rt‒PA: recombinant tissue plasminogen activator)の投与件数等につき検討した.観察期間中の搬送全3453例中,急性期脳卒中症例は531例であり,rt‒PA投与は92例であった.撮像検査をCTに統一することで搬入後の経路が一定化し,事前採血により到着後CTへ直行可能となったこと,フライトスタッフから得た臨床状態,既往歴を参照することでrt‒PA静注療法,経皮的血栓回収術等の治療を予測できたことからrt‒PA療法の適応拡大,各治療開始時間の短縮がもたらされた.当院でのドクターヘリを活用した急性期脳卒中診療プロトコールでは,統一された迅速な積極治療を達成可能であった.

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© 2019 日本脳神経外科救急学会

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