2019 年 24 巻 2 号 p. 138-143
Zeal and Rhoton分類のP2A segment(P2A)に存在する動脈瘤への直達術は,Transsylvian approachやSubtemporal approachが選択される場合が多いが,側頭葉の圧排を軽減する目的で前者の変法であるAnterior temporal approach(ATA)も選択肢に存在する.今回,P2A動脈瘤に対するATAの問題点を自験例から検討する.対象は2012年4月から2018年9月までに直達術を施行した2例のP2A動脈瘤を対象とした.発症様式は破裂と未破裂各1例で,手術はATAで行い,動脈瘤が高位に存在した1例で頰骨除去を計画的に設けたが,術野展開が制限され眼窩外側縁除去を術中に追加した.術後,動脈瘤は消失していたが,1例で側頭葉表層の微小脳挫傷が確認された.術後の新規神経症状は2例共に存在しなかった.ATAは側頭葉鈎回を後方に牽引し,内頚動脈の後方に広範な術野を獲得する方法で,脳正中部の遠位部脳底動脈瘤に多く使用されている.P2A動脈瘤に対してのATAは,側頭葉の可動性を獲得するのに有用な方法であるが,正中病変に対する場合よりも側頭葉の圧排が強くなる傾向にある.したがって最終的な術野の獲得には,手術視軸を側方から前方にアプローチを変更する必要があり,高位病変に対して頰骨よりも眼窩外側縁の除去が有用であると考慮される.