NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
持続脳室灌流療法により救命し得た超高齢者重症脳室炎の1例
中瀬 健太徳永 英守永田 清出口 潤二階堂 雄次
著者情報
ジャーナル オープンアクセス

2019 年 24 巻 2 号 p. 207-212

詳細
抄録

 症例は,生来健康な88歳男性.意識障害,痙攣出現し当院へ救急搬送となった.来院時,JCS 200,項部硬直,髄膜刺激徴候,左上肢・顔面の部分発作を認めた.頭部造影CTでは脳室壁の増強効果と脳室後角に膿を認め脳室炎と診断した.また腹部造影CTでもリング状増強効果があり,肝膿瘍を感染源とし血行性に炎症が脳へ波及したと考えられた.肝膿瘍に対し経皮経肝膿瘍ドレナージを施行後,左右脳室ドレナージ術を行った.脳室ドレーンから膿汁様の髄液を採取し,翌日より脳室灌流療法を9日間施行した.治療開始1週間後の頭部CTで後角に未だ膿の残存を認めたため持続腰椎ドレナージ及び体位変換を行い,さらに2日間継続した.血液培養,髄液培養結果よりKlevsiella pneumoniaeが検出され感受性結果よりCeftriaxone(以下CTRX)を6週間全身投与を行った.これらの治療により炎症所見や全身状態は安定し髄液検査値もほぼ正常化した.第56日目に脳室腹腔短絡術を施行し車椅子座位まで可能となり他院へ転院となった.

 重症脳室炎であっても穿頭ドレナージ術,脳室灌流療法を効果的に行い感染症治療の原則に沿って治療することで,救命できる場合もあると考えられる.

著者関連情報
© 2019 日本脳神経外科救急学会
前の記事 次の記事
feedback
Top