NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
慢性硬膜下血腫との鑑別に苦慮したencapsulated acute subdural hematomaの1例
渕之上 裕原田 雅史寺園 明長尾 考晃黒木 貴夫周郷 延雄長尾 建樹根本 匡章
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2019 年 24 巻 2 号 p. 218-223

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抄録

 Encapsulated acute subdural hematoma(EASDH)は,chronic subdural hematoma(CSDH)と画像所見は類似しているが,開頭手術を要するため,治療方針が大きく異なる.今回われわれは,CSDHとの鑑別に苦慮したEASDHの1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.症例は92歳,男性.1週前より歩行障害と意識障害を認めていた.前医で左CSDHを指摘され,当科紹介受診となった.入院時,Japan Coma Scale II‒30であり,指示動作は困難な状態であった.頭部CTで著明な正中偏位を伴った左硬膜下血腫を認めた.血腫は等吸収域の中に高吸収域が不規則に混在するような像を呈していた.CSDHと診断し,穿頭洗浄血腫ドレナージ術を施行したが,血腫の流出は見られなかった.術直後のCTで血腫は残存しており,正中偏位の改善もなかったため,開頭血腫除去術を施行した.硬膜を切開すると,厚い血腫外膜があり,血腫腔内にはゼリー状の硬い血腫が存在していた.血腫外膜および血腫を除去し,手術を終了した.病理組織学的所見で,摘出した血腫は比較的新しいものであり,肥厚した被膜を認めたためEASDHと診断した.術後,意識障害は改善し,リハビリ転院となった.〔結語〕CTにてhigh densityとlow densityが不規則に混在した硬膜下血腫は,EASDHの可能性があり,治療方針を慎重に検討する必要があると考えられた.

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© 2019 日本脳神経外科救急学会
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