NEUROSURGICAL EMERGENCY
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二重起始後下小脳動脈が関与した前脊髄動脈瘤に対しコイル塞栓術を行った1例
鵜山 淳池内 佑介勝部 毅高石 吉將近藤 威
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2020 年 25 巻 2 号 p. 365-371

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抄録

 後下小脳動脈(PICA)の分岐部位は多様性があり,前脊髄動脈(ASA)と共通幹を持つ可能性がある.二重起始PICA(DOPICA)の頻度は極めて低いが,動脈瘤や解離病変形成に関与することがある.DOPICAが関与したと考えられるASA瘤に対しコイル塞栓を行った1例を報告する.症例は,83歳女性で後頭部痛を発症し,著明な項部硬直を認め当院に紹介受診となった.頭部Computed tomography(CT)でテント上に軽微なくも膜下出血を疑う所見を認め,脳血管撮影では明らかな出血源は不明で保存的加療を行った.入院後14日目に重篤な意識障害(Glasgow Coma Scale 3点)を発症し,後頭蓋窩優位の著明なくも膜下出血および重篤な水頭症の所見を認めた.脳室ドレナージを挿入後,再度脳血管撮影を行うと左椎骨動脈(VA)撮影でVA union近傍の下方に動脈瘤の描出が確認でき出血源と考えられた.動脈瘤頚部からはASAおよびPICAと考えられる血管の分岐も認めた.右VAはもう1本のPICAと考えられる分枝を終枝とし,PICA分岐部遠位とVA unionには交通が無く,2本のPICAは最終的に合流し右小脳下部に灌流しておりDOPICAと考えられた.動脈瘤に対しコイル塞栓術の方針とした.左上腕動脈穿刺を行い左VA経由でVA unionから瘤内に到達しコイル塞栓を行った.水頭症に対し脳室腹腔短絡術を施行し,mRS5で他院に転院となった.ASA瘤の発生の原因として近位のVAの閉塞による血行力学的ストレスの関与が指摘されている.本例ではDOPICAの2本の分岐部の間のVAの閉塞があり,PICAと交通のあるASAに動脈瘤が発生したと考えられた.

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© 2020 日本脳神経外科救急学会

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