NEUROSURGICAL EMERGENCY
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Print ISSN : 1342-6214
スポーツ現場での頭部外傷をどう扱うか
荻野 雅宏中山 晴雄山田 睦雄
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2021 年 26 巻 1 号 p. 10-16

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抄録

 スポーツ現場で生じる頭部外傷では軽症例が問題となりがちで,「軽症」であればあるほど速やかに現場に戻り,くり返し受傷する可能性も生まれる.これらに対処するうえでの現在の国際的なコンセンサスは,夏季オリンピック・パラリンピック終了後の秋に開かれる「国際スポーツ脳振盪会議」が提供する.現時点での最新版は2017年に発表された「ベルリン声明」で,Tokyo 2020もこの方針に準拠する.具体的な対応法としては,CRT(Concussion Recognition Tool; 非医療従事者が脳振盪に対応するためのツール)ならびにSCAT(Sports Concussion Assessment Tool; 医療従事者が用いるツール)がともにウェブ上に公開されており,承認を受けた日本語版もダウンロードが可能である.脳振盪と診断された場合は速やかに競技から離脱し,日をおいて段階的に復帰することが原則だが,諸般の事情がこれを許さぬ場合もある.これらの国際的指針は全ての状況をカバーするわけではなく,絶対的遵守を求めるものではない.個々の受傷例にあわせた対応が必要で,とりわけ現場においては受傷後の神経機能の評価にも長けた本学会のエキスパートらは適任と思われる.スポーツ現場におけるファースト・エイドは多分野にまたがるため,相応の研鑽は必要だが,多くの会員各位がこの問題に関与してくださることを期待したい.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会

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