NEUROSURGICAL EMERGENCY
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高齢者急性硬膜下血腫に対する内視鏡下血腫除去術
鈴木 一秋若林 健一橋田 美紀山本 諒清水 大輝伊藤 真史雄山 博文
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2021 年 26 巻 2 号 p. 159-166

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抄録

 急性硬膜下血腫は予後不良な疾患である.本疾患に対する標準的治療は大開頭による開頭血腫除去術であるが,併存症が多く耐術能の低い高齢者に対しては手術侵襲が高く,その適応に悩むことがある.近年急性硬膜下血腫に対する神経内視鏡を用いた治療の有効性が報告されている.今回2017年4月から2020年3月の期間に当院(豊橋市民病院)にて治療した高齢者急性硬膜下血腫患者のうち,内視鏡下血腫除去術を施行した6例を対象として,患者背景,転帰,治療内容について検討し,文献を交え内視鏡手術の有効性と問題点について考察を行った.6例(男性4例,女性2例)の平均年齢は77歳(70‒87歳),抗血栓薬は3例(抗凝固薬1例,抗血小板剤2例)で服用していた.受傷機転は,転倒・転落5例,交通事故による高エネルギー外傷が1例であった.発症前modified Rankin Scale(mRS)は平均2.2(0‒4),術前Glasgow Coma Scale(GCS)は平均7.8(4‒12)であった.麻酔方法は全身麻酔が5例,局所麻酔が1例.平均手術時間は94分(67‒110 分)であり,同時期に当院で高齢者急性硬膜下血腫に対して行った開頭血腫除去術12例(平均手術時間154分)と比較して有意に手術時間が短かった(p<0.05).術後出血は認めなかった.3ヶ月後のmRSは平均3.3であった.止血,脳腫脹に十分注意を払うことで安全かつ有効に内視鏡下血腫除去術が遂行でき,症例によっては局所麻酔下の手術が可能であった.内視鏡下血腫除去術は高齢者の急性硬膜下血腫に対する1つの治療選択肢となり得ると考えられ,さらなる適応の拡大が期待される.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会
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