NEUROSURGICAL EMERGENCY
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Print ISSN : 1342-6214
低DWI‒ASPECTS症例に対する血栓回収療法の治療成績
荻野 達也進藤 孝一郎立田 泰之櫻井 卓遠藤 英樹上山 憲司瀬尾 善宣大里 俊明中村 博彦
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2021 年 26 巻 2 号 p. 153-158

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抄録

 当施設における低DWI‒ASPECTS症例に対する血栓回収療法の成績を明らかにする.2016年4月から2019年3月に単一施設で実施した脳主幹動脈閉塞に対する血栓回収療法127例のうち,内頚動脈または中大脳動脈閉塞,かつMRIでのASPECTS評価を行った101例について,DWI‒ASPECTS5点以下と6点以上の2群に分け,後ろ向きに比較検討を行った.101例のうちDWI‒ASPECTS 3‒5点の群が29例,6‒10点の群が72例であった.DWI‒ASPECTS 3‒5点の群vs. 6‒10点の群において,3‒5点の群で来院時NIHSSは有意に高く(中央値22 vs. 16,p=0.001),内頚動脈閉塞が有意に多かった(48% vs. 19%,p=0.003).3‒5点の群でTICI 2b‒3が有意に少なかった(62% vs. 88%,p=0.004).全頭蓋内出血は3‒5点の群で有意に多く(59% vs. 25%,p=0.001),症候性出血に有意差は認めなかった(3% vs. 0%).7日後mRS(中央値5vs. 2,p<0.001),90日後mRS(中央値4vs. 1,p<0.001)ともに3‒5点の群が有意に不良であった.3‒5点の群の90日後mRSは,0‒2が24%,0‒3が31%であり,4が31%,5が31%,6が7%であった.3‒5点の群においては,90日後mRS 0‒2の転帰良好群は,mRS 3‒6の群より内頚動脈閉塞が有意に多く(86% vs. 36%,p=0.023),多変量解析では内頚動脈閉塞(オッズ比15.230,p=0.034)は転帰良好予測因子であった.DWI‒ASPECTS 3‒5点の群は,6点以上の群と比較し有意に転帰不良であったが,90日後の歩行自立は31%に認めた.DWI‒ASPECTS 3‒5点の内頚動脈閉塞例においても,必ずしも転帰不良ではない可能性も示唆された.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会

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