NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
大型前交通動脈瘤破裂による鋳型状脳室内血腫を伴う高齢重症くも膜下出血に対する治療戦略
—経脳室アプローチの有用性—
小野寺 康暉竹林 誠治櫻井 寿郎小林 徹小林 理奈栗栖 宏多後藤 秀輔瀧澤 克己
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2021 年 26 巻 2 号 p. 175-183

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抄録

 鋳型状脳室内血腫を伴った大型前交通動脈瘤破裂による高齢重症くも膜下出血(subarachnoid hemorrhage: SAH)症例に対しての低侵襲治療戦略を示す.Kocher’s pointを中心に小開頭を行い,側脳室前角に脳室ドレーンを挿入する.マイクロ下に脳室ドレーンをガイドとして側脳室内に至り,脳室内血腫を可及的に洗浄除去した後に,そのまま動脈瘤にもアプローチしてclippingを行う.動脈瘤の処置ではcomplete clipにはこだわらず,破裂点の確実な閉鎖に主眼を置く.重症くも膜下出血に対する急性期手術では,再破裂予防の動脈瘤処置のみでは不完全であり,重症化の原因となっている病態の改善がより重要となる.患者の転帰は一次脳損傷の程度に依存するため,一次脳損傷を最小限に抑え,新たな脳損傷を回避できた場合にのみ良好な転帰の可能性が見い出せる.大型,高位の前交通動脈瘤に対する開頭術ではinterhemispheric approach (IHA) が選択される場合が多いが,前頭洞の開放やアプローチの困難さ,等のため手術には時間を要し侵襲も大きい.本アプローチでは前頭洞開放のリスクやinterhemispheric fissureの開放操作がないため,短時間・低侵襲で急性期処置(脳室内血腫の除去による病態改善と動脈瘤処置による再破裂予防)が可能となる.適応に関しては,術前の画像所見を十分に検討し,新たな脳損傷をきたさずに経脳室的に動脈瘤へのアプローチが可能かどうかの判断が重要となる.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会

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