NEUROSURGICAL EMERGENCY
Online ISSN : 2434-0561
Print ISSN : 1342-6214
皮質下出血発症後短時間で生じたとおもわれた致死的胸部大動脈解離の1例
高木 悠輝堤 佐斗志寺本 紳一郎野中 宣秀大倉 英浩鈴木 隆元石井 尚登
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2021 年 26 巻 2 号 p. 184-188

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抄録

 既往に高血圧がある51歳男性.起床後からの左半身脱力と構音障害を主訴に同日当院救急搬送となった.診察時血圧高値,左片麻痺,構語障害を示し不穏状態であった.採血上はD‒dimerが上昇していた.頭部CT上右前頭葉にmass effectが小さな最大径38×34 mm大の皮質下出血を認めた.頭部単純CT施行後から胸痛の訴えあり,直後に心肺停止となった.速やかに心肺蘇生を開始,直後の胸部X‒p上心胸郭比の増大を認めた.心肺蘇生への反応はなく90分後に死亡確認となった.来院から死亡確認まで3時間の経過であった.Autopsy imagingを施行したところ上行大動脈壁の破綻と心囊液貯留の所見を認めた.以上から,皮質下出血発症後短時間でStanford Type Aの大動脈解離を併発,心タンポナーデを起こし死に至ったと考えた.急性大動脈解離は脳出血急性期に併発し得る病態である.大動脈解離を想定するには患者の訴えに対する可能な限りの傾聴,及び脳神経系由来ではない病態が合併する可能性も念頭に置いた注意深い症状観察が肝要である.

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© 2021 日本脳神経外科救急学会
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