2022 年 27 巻 1 号 p. 1-6
超高齢社会の進展にあって,持続可能な社会保障制度の確立を図るための改革の推進に関する法律が平成29年4月1日から施行されている.そこには地域医療構想の策定も含まれているので,これが具現化されて地域において求められる各病院の役割に変更が生ずれば救急車による患者の搬送(垂直連携)先の選定にも影響が出るであろう.しかし,このことに先駆けて,搬送患者の約4割が75歳以上となって久しい現状においては,地域包括ケアシステムなどにより日常的に多職種からの支援(水平連携)を受けている患者が,例えば慢性心不全の悪化や誤嚥性肺炎などの理由で繰り返し救急搬送となっている実態がある.救急医療はこのような意味で,水平連携に準じた位置付けにある,またはその要となっていると理解できる.加えて,風水害による犠牲者(死亡・行方不明者)に占める65歳以上の割合は,我が国の高齢化率の上昇を遥かに凌ぐ勢いで上昇している.ここでは地域の医療・介護に関する「面としてのBCP(事業存続計画)」という考え方が求められ,医療と介護が円滑に連携する密な関係性が不可欠である.またこのことはその基盤である地域社会そのものの災害への備えと実践にも繫がる.今や病院の救急医療に与る機能は,地域の医療介護連携についてのみならず,自らの医療圏の地域社会に対しても地域における災害レジリエンスの強化という重要な役割を担っている.救急医療の今日的な意義について確認した.