2022 年 27 巻 2 号 p. 159-164
髄液漏出症の10~20%に慢性硬膜下血腫を合併するとされるが,初診の段階で髄液漏出症による二次性の慢性硬膜下血腫を診断することは極めて困難であり,時として治療方針の決定に難渋し,急激な経過をたどる事がある.今回我々は髄液漏出症に両側慢性硬膜下血腫を合併した例に対して,緊急硬膜外自家血パッチ療法を施し,切迫状態を回避した症例を経験した.両者が併存する症例に対する治療は,頭蓋内圧亢進と低下といった,相反する病態を考慮する必要がある.穿頭血腫除去術と硬膜外自家血パッチ療法のどちらを先行して実施するかに明確な決まりがないのが現状である.治療法の判断を誤ると状態の悪化を来しうる可能性がある.治療の判断材料として頭蓋内圧モニターの留置が治療方針の決定の一助となると考えた.今回経験した症例を通して,髄液漏出症と慢性硬膜下血腫の合併例に対する治療アルゴリズムを作成したので報告する.