2025 年 30 巻 1 号 p. 20-29
対側椎骨動脈(vertebral artery, VA)低形成に伴う,椎骨動脈解離性動脈瘤(vertebral artery dissecting aneurysm, VADA)の破裂症例に対して,亜急性期にステント併用コイル塞栓術(stent‒assisted coil embolization, SAC)を行い,良好な転帰を得られた2症例を経験した.症例1は54歳女性,右VAは低形成であり,posterior inferior cerebellar artery (PICA) involved typeの左VADA破裂によるくも膜下出血(subarachnoid hemorrhage, SAH)を発症し,SAH Day 20にSACを行った.症例2は59歳男性,右VAがPICA endとなっており,左VADA破裂によるSAHを発症し,SAH Day 0に再破裂した.脳室ドレナージ術を行い,急性期を悪化なく経過後,SAH Day 18にSACを行った.いずれの症例も手術合併症は認めず,術後経過は良好であった.SAH急性期のSACが有用であるとの報告もあるが,対側VA低形成例では脳底動脈への側副血行路が期待できないことから,ステント内血栓性閉塞を生じると重篤な状態に陥るリスクが高い.このような症例では,軽症例に限っては,血栓性合併症によるさらなる悪化を回避するため,そのリスクを低減しうる待機的な手術も選択肢の一つと思われた.