2025 年 30 巻 1 号 p. 12-19
脳血管内手術で良好な転帰を得た部分血栓化巨大脳動脈瘤の1例を経験したため若干の文献的な考察と共に報告する.
症例は63歳男性,深夜に自宅前で座り込み,見当識障害,歩行困難を呈した状態で発見され前医救急外来を受診,頭蓋内占拠性病変を疑われ同日当科紹介受診した.来院時,JCS I‒3の軽度見当識障害を呈し,歩行時のふらつきが著明であった.前医CT,MRIで鞍上部から左尾状核にかけて最大径26 mmの占拠性病変を認め,閉塞性水頭症を合併しており,同日当科入院した.造影CT,造影MRI,脳血管撮影を施行し,左前大脳動脈A1遠位部の部分血栓化巨大脳動脈瘤と診断した.動脈瘤の大きさや局在等から,開頭手術は困難と判断した.右内頚動脈撮影では,前大脳動脈は右A1 dominantで前交通動脈が発達し,左A2も描出された.大部分が血栓化した動脈瘤であり,また動脈瘤が存在する左A1は血管径が細く強く蛇行していたため,左A1にステント留置してのステント併用コイル塞栓術での治癒は困難と判断した.瘤内塞栓に加え動脈瘤の遠位と近位でコイルを用いてトラッピングを行う方針とした.左A1起始直後に穿通枝を認めたため,A1近位側はこれを温存するように母血管閉塞を行った.適宜血管撮影を行い,穿通枝や右A1からの側副血行を確認しつつ塞栓を行った.術後に新規虚血症状や脳梗塞は認めず,脳血管撮影で瘤内への血流消失と,右A1から前交通動脈を介して左A2以遠の良好な血流を確認した.水頭症症状も改善傾向で,術後15日目にmRS 2でリハビリ転院した.治療半年後のMRIで瘤径は縮小しmass effectも改善し,mRS 0に改善した.瘤内塞栓術に加え親動脈のトラッピングを行ったことで,良好な経過に繫がったと思われた.