神経治療学
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原著
難治性嚥下障害に対し,免疫グロブリン大量静注療法とバルーン拡張法の 組み合わせ治療が奏効した皮膚筋炎の1例
三谷 琴絵村田 顕也
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2017 年 34 巻 3 号 p. 315-319

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抄録

症例は74歳男性.発疹と共に四肢,体幹の筋力低下が進行し,その半年後に嚥下障害が出現した.検査の結果,皮膚筋炎と診断し,高容量のステロイド内服(prednisolone 60mg/day)を開始したが,ステロイドミオパチーにより,状態はさらに悪化した.6週間後に免疫グロブリン大量静注療法(intravenous immunoglobulin:IVIg)(0.4g/kg/day×5days)を併用し,四肢の筋力低下や筋原性酵素の上昇は比較的早期に回復に向かったが,1回のIVIgで,嚥下障害への効果は十分ではなかった.IVIgは,月1回ペースで計3回施行した.反復唾液嚥下テストは0回から3回に回復したが,依然として嚥下障害は重度であり,経皮内視鏡的胃瘻造設術を施行した.嚥下造影検査では食道入口部の開大不全が顕著であった.その後,輪状咽頭筋部の機能不全に対して,バルーン拡張法をほぼ毎日2ヶ月間繰り返した所,嚥下障害はさらに回復に向かい,入院から9ヶ月後にはゼリー食の摂取が可能となった.本症例のごとく皮膚筋炎の難治性嚥下障害にステロイド治療やIVIgのみで十分な効果が得られない場合には,バルーン拡張法による輪状咽頭筋部の機能不全の改善が有用なことがあり,試みるべきである.

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© 2017 日本神経治療学会
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