2018 年 35 巻 1 号 p. 27-32
症例は62歳男性.突然の眼痛で発症.強膜炎およびmyeloperoxidase anti–neutrophil cytoplasmic antibody(MPO–ANCA)陽性であり,ANCA関連血管炎が疑われた.Prednisolone(PSL)で治療されたが,MPO–ANCA上昇に伴い頭痛,左顔面感覚障害,嚥下時違和感が出現し,さらに左混合性難聴,間質性肺炎を合併し,顕微鏡的血管炎と診断された.経過中,外耳道炎を併発し感染症が疑われ抗菌薬開始とPSLが減量されたが,それに伴い滲出性中耳炎を認め,その後左三叉神経第1枝,第2枝,左顔面神経,左聴神経,左舌咽神経,左副神経,左迷走神経と左側のみの多発脳神経障害が出現した.頭部造影magnetic resonance imaging T1強調画像及び頭部computed tomographyで左内頚動脈錐体部から海綿静脈洞部,側頭骨,乳突蜂巣に骨破壊を伴う肉芽腫を認め,ANCA関連中耳炎によるGarcin症候群と診断した.経静脈的免疫グロブリン大量療法,ステロイドパルス療法及び後療法としてPSL 50mgを投与し,肉芽腫は縮小し症状は改善した.近年,ANCA関連血管炎に中耳炎を合併することが報告されており,ANCA関連血管炎性中耳炎(otitis media with ANCA associated vasculitis:OMAAV)として提唱されている.本症例はOMAAVに多発脳神経麻痺を合併した症例と考えられ,貴重であり報告した.