神経治療学
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ISSN-L : 2189-7824
原著
L–ドパ持続経腸療法における血中濃度の検討―効果と課題について
矢部 勇人大坪 治喜久保 円宮上 紀之多田 聡安藤 利奈永井 将弘野元 正弘
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2019 年 36 巻 2 号 p. 91-95

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抄録

[目的]Parkinson病に対してL–ドパ持続経腸療法(Levodopa Carbidopa Intestinal Gel:LCIG療法)が承認された.ウェアリングオフの強い症例に対するLCIG療法の効果と課題について血中濃度の検討を含めて報告する.[方法]当院および関連施設でLCIG療法を施行され,血中濃度を評価したParkinson病6例に対して,施行前後においてウェアリングオフの有無と程度,オン時間の変化,ジズキネジア,治療への満足度などを評価し,血中濃度と症状の関連性,課題等について検討した.[結果]オフ時間は短縮した.効果が不十分で頻回の追加投与を行った症例ではジスキネジアが増加し長くなった.投与量を一定としている例では一日の血中濃度はおおむね安定していた.しかしながら,血中濃度が保たれているにも関わらずオフ症状を訴える症例も認められた.また,一日の血中濃度は安定していたが,個体間,また同一症例においても測定日によって血中濃度に変化を認めた.血中濃度の高い例ではジスキネジアが多かった.本人の満足度をもとに持続投与量を設定すると血中濃度が高くなる例があり,血中濃度を確認することで減量することが出来た.[結論]LCIG療法にて血中濃度は一定となったが,血中濃度が一定でもオフを訴える例がみられ,オフの誘因としてL–ドパ濃度以外の要因も示唆された.また,症例ごと,加えて同一症例でも日によって血中濃度に変動が見られた.L–ドパの動態には体重や消化管での吸収・代謝などが関連している可能性があり,投与量の決定には臨床症状とともに,血中濃度のモニタリングが参考となる.

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© 2019 日本神経治療学会
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