2020 年 37 巻 5 号 p. 755-759
目的 入院患者のせん妄を観察する.方法・対象 電子診療録を検索し後方視的にDSM5を用いせん妄と診断しえた事例の症状,背景疾患,罹病期間,転帰等を検討した.結果 観察期間内の患者実数3956人にせん妄は527人(13.4%)生じた.性差はなかった.背景疾患でせん妄罹病期間に統計学的有意差はなかった.3か月間の観察期間中に認知症の行動・心理症状BPSDが関与した例を除いたせん妄症例をみると自宅退院群でせん妄罹病期間が4.3日と施設入所群や慢性入院群に比し有意に短かく,せん妄罹病期間が21日以上の群は20日以下の群に比して生存日数が有意に短縮していた.結論 基礎疾患によってせん妄罹病期間に差異がなく,せん妄罹病期間は自宅退院の数や生命予後に統計学的に有意に関係していた.せん妄方策を各職種間共有する必要がある.