神経治療学
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症例報告
重症アトピー性皮膚炎の経過中,多発脳梗塞を呈した56歳男性例
浅原 有揮須田 真千子宮川 晋治鈴木 正彦
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2021 年 38 巻 5 号 p. 752-756

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抄録

症例は56歳男性.2016年から重症アトピー性皮膚炎で当院皮膚科を通院していた.2017年に左不全片麻痺が出現後,activity of daily livingが階段状に低下し2018年末には独歩困難となった.2019年1月自宅で倒れているところを発見され緊急入院した.来院時,意識障害,左錐体路徴候,全身の苔癬化を呈し,採血では高度脱水とIgE 81,399U/mlと上昇を認めた.MRIで大脳皮質および白質,小脳,脳幹に急性期病変と陳旧性病変が混在する多発脳梗塞を認めた.明らかな血管病変や心内塞栓源なく,凝固系異常や膠原病関連抗体も認めず,アトピー性皮膚炎症の関連した多発脳梗塞と診断した.cilostazol,rupatadine,ステロイド軟膏を開始後,皮膚症状は著明に改善し脳梗塞の臨床的再発を1年間認めなかった.アトピー性皮膚炎は脳梗塞リスクと指摘されており,血栓傾向や皮膚感染による塞栓子形成を呈した例が報告されている.アトピー性皮膚炎治療が脳梗塞予防に繋がることを示唆する貴重な症例と考えられ報告した.

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© 2021 日本神経治療学会
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