2023 年 40 巻 1 号 p. 59-64
入院中の神経難病患者に対して,作業療法の一環としてテレプレゼンスロボットの一つであるOriHime®を使用することで認められた生活の質(quality of life:QOL)の変化について報告する.対象は長期療養入院中の進行性筋ジストロフィー患者1名と筋萎縮性側索硬化症患者3名である.患者はベッド上から自宅等に設置したテレプレゼンスロボットを遠隔操作することで疑似的に外出を体験して,家族などとコミュニケーションをとった.ロボット使用前後にQOL評価のためSchedule for the Evaluation of Individual Quality of Life – Direct Weighting(以下SEIQoL–DW)を施行した.ロボット使用後には全ての患者でQOLの指標であるSEIQoL indexが上昇し,自身の生活に重要と考えられる領域(キュー)に“家族”を全員が挙げるようになったほか,“家族”のキューの重要度や満足度が上昇していた.コミュニケーションや移動に制限がある神経難病入院患者において,テレプレゼンスロボットを用いた支援は,患者と家族との繋がりの確認や強化に役立ち,その結果,QOLの向上をもたらすことができると考えられた.