神経治療学
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総説
ロスマリン酸含有レモンバーム抽出物の抗Alzheimer病効果に関する臨床試験
篠原 もえ子小野 賢二郎
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2023 年 40 巻 3 号 p. 401-406

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抄録

わが国では認知症高齢者の増加が医療・社会問題となっている.ポリフェノールは抗酸化作用を有し,抗認知症効果が期待されている.著者らは,食による安全で安価な認知症予防法を確立するため,ポリフェノールの一種であるロスマリン酸(rosmarinic acid:RA)に注目し,ハーブの一種のレモンバーム(Melissa officinalis)からRA含有レモンバーム抽出物カプセルを作成した.RA含有レモンバーム抽出物カプセルを用いて,ポリフェノール長期摂取の安全性と忍容性,及び認知症予防における有効性を明らかにするために,ヒトにおける第I相,第II相,第III相臨床試験を実施した.

第I相臨床試験では健常者でRAの薬物動態と単回投与の安全性を明らかにした.第II相臨床試験では軽度Alzheimer病(Alzheimer disease:AD)患者にて認知症の行動・心理症状(behavioral and psychological symptoms of dementia:BPSD)の低減効果を明らかにした.そして第III相臨床試験では非認知症の非高血圧高齢者でRA長期摂取の認知機能低下抑制効果を示した.

RA含有レモンバーム抽出物は安全で忍容性が高く,非高血圧高齢者で認知機能低下抑制効果を示すこと,およびAD患者のBPSD低減にも有用な可能性を明らかにした.本稿では,前述の第I, II, III相臨床試験について概説するとともに,機能性食品によるAD予防法開発の現状と展望について述べる.

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© 2023 日本神経治療学会
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