2023 年 40 巻 4 号 p. 666-669
症例は45歳,男性.腰部脊柱管狭窄症に対する腰椎後方固定術後に,右前腕の強い痛みを発症した.2週間後,痛みの改善とともに右上肢の多巣性の筋力低下・筋萎縮を生じ,MRIで腕神経叢の腫脹を認めた.神経痛性筋萎縮症(neuralgic amyotrophy:NA)と診断し,免疫グロブリン静注療法,ステロイドパルス療法を行い右上肢筋力低下は部分的に軽快したが,尺骨神経領域の筋力低下が残存した.MRIで肘部管症候群を認め,尺骨神経皮下前方移行術を施行し,尺骨神経支配筋の筋力も改善した.
本例では肘部管症候群による尺骨神経への機械的圧迫があり,そこに腰椎後方固定術により惹起された免疫反応がトリガーとなり,手術部位から離れた上肢の尺骨神経支配筋を中心とした領域にNAを発症した可能性がある.