2024 年 41 巻 1 号 p. 73-77
患者は48歳,女性.既往歴,胸腺腫.2002年に眼瞼下垂と上肢の筋力低下が出現し当科受診した.抗アセチルコリン受容体抗体(抗ACh–R抗体)陽性,エドロホニウム試験陽性であり重症筋無力症(myasthenia graves:MG)の診断で,副腎皮質ステロイドパルス療法,血漿交換を施行した.その後は少量の免疫抑制剤の内服で寛解状態を維持していた.2021年10月,横行結腸癌stage Ⅳbと診断され,外科的治療後に免疫チェックポイント阻害薬(immune–checkpoint inhibitors:ICIs)の2剤併用療法を受けた.その後,血清CK値上昇,全身の筋力低下,眼瞼下垂,嚥下機能悪化を認め,免疫関連副作用(immune–related adverse events:irAE)による筋炎とMGのクリーゼ合併と診断され,その後,呼吸障害が出現し,人工呼吸器管理となった.Dexamethasoneの増量,免疫グロブリン大量療法,血漿交換を行うも効果はなかった.その後,irAE腸炎・肝炎の合併を来し,第94病日に永眠した.MG治療中の患者では寛解期であってもICIsを使用する場合は多彩なirAEを合併する可能性があり,注意が必要と思われた.