2024 年 41 巻 1 号 p. 69-72
症例は70歳男性.2021年12月X日に火鉢をつけたまま就寝し,翌日から気分不良が出現し2日間仕事を休んだが以降は普段通りに回復した.X+20日頃より遂行機能障害が出現し,前医にて頭部MRI検査で白質脳症を認め,間歇型一酸化炭素(CO)中毒を疑われ,高気圧酸素治療(Hyperbaric oxygen therapy:HBOT)目的にX+35日目に当科を紹介受診した.同日からHBOTを開始し,10回終了後では症状の改善は乏しかったが,30回終了頃より認知機能検査の急激な改善を認め,合計43回で治療終了し退院した.退院1ヵ月後,5ヵ月後で認知機能を評価したが改善を維持できていた.
CO中毒の治療にHBOTが有効とされているが定説は得られておらず,また治療期間も定まっていない.本症例は計43回に及ぶ長期間のHBOTが症状改善に寄与したと考え,文献的考察を加えて報告する.