抄録
2001年夏、筆者は、オークランド大学IRI(international Research Institute for Maori and Indigenous Education)に滞在していた。ある日、隣室のフイオナ・クラム博士から、できあがったばかりのドラフトを手渡された。『Determination of Maori Provider Success Provider Interviews-』とある冊子を手にとって、おもわず「What is a Maori Provider?」とたずねた。素朴な疑問から発したことばではあったが、彼女の答えは、意外にも、それほど明快なものではなかった。今にして思えば、マオリ・プロバイダーをめぐる問題は、「マオリとは何か」という根源的問いかけを含んでいたからではないだろうか。マオリにとって、近年、重要度を増したマオリ・プロバイダーであるが、一般には、あまり注目されてこなかった。しかし、最近、グローバルな視点から、マオリ・プロバイダーを評価しようとする動きも出てきた。筆者は、これまで、エスニシティと持続可能性のテーマで、アーミッシュやマオリを研究してきた。先報においては、マオリ社会の多様性と持続可能性、マオリ教育と持続可能性について論じた。そして、マオリ社会の持続可能性を考えるとき、マオリ・プロバイダーの存在は重要な位置を占めていることを指摘した。本論では、さらに、マオリ・プロバイダーの過去、現在を概観し、問題点を抽出して、マオリ・プロバイダーをめぐる新しい動きを手がかりに、マオリ・プロバイダーとマオリ社会のこれからを考察する。