抄録
口底に発生する類皮嚢胞は比較的まれな疾患であり,類皮嚢胞全体の約7%が,頭頸部領域に発生するとされている。その好発部位は外側眉部であり,口底はこれに次ぐ発生頻度を示している。口底類皮嚢胞は,顎舌骨筋との解剖学的位置関係に基づき,舌下型,オトガイ下型,顎下型の3 型に分けられ,組織学的には類皮嚢胞,類表皮嚢胞,および奇形腫に分類されている。近年,核磁気共鳴画像(MRI)において,特徴的な所見である“sack of marbles” signの報告例が認められている。これは辺縁のみの増強効果に加えて,その内部構造の特異な所見は,類皮嚢胞の診断への決め手になるとされている。今回我々は,術前MRI検査において“sack of marbles” sign を示した23 歳の女性に発症した口底の類皮嚢胞の1 例を報告する。本症例は全身麻酔下に口腔内アプローチによる摘出術を施行し,病理組織学的検査により最終診断は類皮嚢胞となった。術後5年経過するが,現在まで再発は認められていない。本症例は,口底に発生する類皮嚢胞において,MRIが診断および他疾患との鑑別に極めて有用であり,特に“sack of marbles” sign は本疾患を示唆する重要な画像所見であると考えられた。