知能と情報
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原著論文
再構成生体神経回路網における知覚と知性の探求
工藤 卓田口 隆久
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2006 年 18 巻 3 号 p. 402-413

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抄録

生物, 特に動物の情報処理機能を模倣して実世界で有効な情報処理装置を考案しようと言う試みが追求されている. 動物の情報処理機能の特徴は外乱に強い柔軟さ, 曖昧さと, 情報処理ルールの自律的獲得であるが, そのメカニズムについては未だ不明な部分が多い. 我々はラットの海馬から取り出した神経細胞で培養神経回路網を再構成した系を用いて, 生物的な情報処理の原理を探求している. この分散培養神経回路網を電気信号を介して環境と相互作用させることで, 外界を認識してある判断を行いうる情報処理系が構築され得るかを探求している. このことは言い換えれば人工環境下に培養し, 再構成された生体神経回路網の中に, 「知覚」や「知能」の原型が生成され得るかを検証するということである. 第一段階として, 高度に抽象化された外界として2つの記録電極から得られた神経活動電位に対し, AND演算をしたフィードバック刺激を神経回路網に入力した. その結果, 2つの信号の最初の同期性の程度に応じて神経回路網電気活動の時空間パターンが大きく変更された. この結果をふまえ, 分散培養神経回路網は外界との相互作用によって自身の反応ルールを変更しうると言う仮説に立って, 分散培養神経回路網と小型ロボットを接続し, 外界と相互作用する系を現在構築している.

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© 2006 日本知能情報ファジィ学会
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