知能と情報
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特集2:「FSS2023ショートノート」
会  告
特集2論文:FSS2023ショートノート
ショートノート
  • 河原 智弘, 秋月 拓磨, 荒川 俊也, 高橋 弘毅
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 501-506
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    ドライバ起因の事故を防止するために,運転への意識低下を招く行動や状態の発生をモニタリングし,潜在的な事故危険性を把握することが重要である. この課題に対して,著者らは手首装着型センサを用いたドライバ状態推定手法の開発に取り組んでいる. これまでの検証は,実験室環境下のみで行われていた.しかし,車両振動や自然な状況下でのドライバの行動の多様性を検証するために,実際の運転環境下でのデータ収集が不可欠である.そこで本研究では,実環境下で運転行動データ収集を行うために手首装着型センサを利用した車載計測システムを開発した.開発した計測システムは,ユーザ自身が簡易な操作のみで利用でき,手先加速度のほか,車両の加速度・位置,操舵角,映像の各データを同期して最大約120分の収録ができる.開発した計測システムの基礎検証として,測定した各種データの同期精度と操舵角の推定精度について評価を行い,開発した計測システムの有効性を検討した.

  • 竹之内 宏, 千北 茉瑚
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 507-511
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,ユーザが色特徴に関するオノマトペを用いて,イラストを編集できるシステムを提案する.提案システムは,様々なオノマトペに対する色特徴の変化量をユーザ個人の感性に合わせるチューニングフェーズ及びチューニング結果を用いて実際にイラストを編集する利用フェーズの2つのフェーズで構成されている.チューニングフェーズでは,オノマトペにおける色特徴変化とユーザの感覚を近傍探索によって調整する.評価実験では,提案システムにおけるユーザのイラスト編集負荷に関する有効性を検証している.実験結果より,提案システムは,各特徴量を手動で操作する従来の画像編集システムよりも少ない編集負荷でイラストを編集できることが示唆されている.

  • 浅井 佑仁, 伊丹 琢, 米山 淳
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 512-516
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    このショートノートでは,制御行列の不確かさを考慮した高木・菅野ファジィシステムに対するロバストな安定化制御器の設計について議論する.高木・菅野ファジィシステムは,幅広い種類のシステムを表現することが可能であり,非線形システム制御に対して有効である.しかし,システム同定において,一般的に,実システムと同一の数式モデルを作成することは不可能である.そのため,制御器の制御品質を向上させるために,モデリング誤差である不確かさを考慮した高木・菅野ファジィシステムに対する制御器を設計する必要がある.本研究では,メンバーシップ関数を積分した関数を組み込んだ非二次形式リアプノフ関数を採用し,ロバストな安定化条件を設計する.最後に,数値例を用いて本稿で設計した制御器の有効性を検証する.

  • 渡邉 紫花, 中村 剛士
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 517-521
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    音そのものがあるイメージを喚起する現象を音象徴と呼ぶ.音象徴に関する研究は数多く報告されているが,未だ解明されていない部分も多い.我々の研究の最終目的は,音象徴の全体像を明らかにすることである.そのために,様々な事例を収集し,それら独自の音象徴の発見を試みる.その結果得られた多くの音象徴事例を統合することで,音象徴の全体像を明らかにしたいと考えている.本研究では,音象徴を持つと思われる一事例として,モンスターハンターシリーズに登場するモンスターの名前を採用した.モンスター名とモンスターの全長の間に音象徴が存在するのではないかと考えたためである.実験では,モンスター名に対し“大きい”・“小さい”の2クラス分類を行った.分類器はCNNベースで構成し,特徴解析にはXAI技術の一つであるGrad-CAMを用いた.我々は,実験結果から,子音/r/が大きい印象を与えるという仮説を立てた.また,この仮説を主観評価実験と統計的検定によって検証したところ,仮説を支持する結果が得られた.

  • 松本 義之
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 522-526
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    現在,観光情報を収集する手段として,インターネットを利用する事が当たり前となってきている.従来,旅行に関する情報は,旅行雑誌・テレビ・旅行代理店などから収集していた.しかし,インターネットの普及に伴い,それらに代わってネット検索による観光情報取得が行われている.また,観光地を訪れた来訪者が,その体験を SNS などに書き込んでいる.観光客増加のために,SNSを含めたネット上の情報分析が必要になってきている.本研究では,Web上に存在する膨大なデータから,観光推進や地域振興などで活用するために観光情報を収集する.収集したデータに対してテキストマイニングによる分析を行う.その結果をもとにして,有益な知見・知識を抽出する事を目的としている.本論文ではコロナ禍と非コロナ禍における観光情報の違いについて分析を行う.SNSなどで発信される情報に違いがあるかどうかを検討し,比較を行った.

  • 鷲見 銀河, 北島 巧海, 川中 普晴, Balaji Iyer, V. B. Surya Prasath, Bruce J. Aronow
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 527-531
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    運動障害を伴う脳性麻痺の治療には日常的な歩行機能評価が極めて重要となる.しかしながら,歩行機能を評価するためには光学式モーションキャプチャなどの高価な機器と高度な専門知識が必要となるため,日常的に歩行機能評価を行うことは容易ではない.そこで本研究では,特殊な装置や専門知識を必要とせず,一般的なカメラによって撮影された歩行動画から歩行機能を評価するシステムの構築を目指す.ここでは研究の第一段階として,スマートフォンなどのカメラにより撮影された被験者の歩行動画から深層学習を用いて各関節位置の時系列変化を推定し,歩行の異常度を評価する手法を提案する.また,本論文では実際の脳性麻痺患者の歩行動画から作成されたデータセットを用いた評価実験を行い,提案法により得られた異常度と臨床現場で用いられる歩行機能指標との関係性についても検討した.実験の結果,提案法により患者の歩行機能の異常度を推定できる可能性が示唆された.

  • 高田 諒, 布施 陽太郎, 高木 昇, 澤井 圭, 増田 寛之, 本吉 達郎
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 532-537
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,仮想空間のすれ違い時に起こり得る短いインタラクションの際に,ロボットの視線が人間行動に与える影響を調査する.ロボットの視線は人との距離に影響を与える事例が報告されている.ロボットの視線研究では,すれ違い環境下でのロボットとのアイコンタクトによる人間行動への影響はあまり調査されていない.そこで,すれ違い環境におけるロボットの視線の有無によって被験者がロボットに対して取る距離,被験者の視線データの分析を行う.分析結果を用いて,ロボットの視線がすれ違い環境においても人との距離に影響を与えるかの評価を目的とする.実験ではすれ違い時に起こる短いインタラクションを試みるために,すれ違い時にロボットが周囲の人々に視線を向ける外見を考案した.実験結果から,すれ違い環境では人との距離に影響を与えないことが確認できた.しかし,ロボットが視線を向けることで,被験者により注目されることが明らかになった.よって,歩行時にロボットが周囲の人間に視線を向けることで,人間とロボットの短いインタラクションを促すきっかけとなる可能性がある.

  • 小野 瑞稀, 岩下 志乃
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 538-542
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では児童生徒が精神疾患になりうるリスクを抑えることを目的とし,投影法の1つである樹木画を用いてユーザの心理状態を推測し,その状態に合った心理教育を提供するシステムを作成することを最終目標とする.今回は,そのうちの樹木画を描いた結果からユーザの心理・性格傾向を示す部分を作成した.この描画システムはパソコン上でマウスを使って木の描画を行うものとなっており,木の幹,根,葉の2D オブジェクトの中から好きなオブジェクトを選んで描画し,描画を終えると性格や心理状態を推測する.提案したシステムを使用して作成された樹木をアナログで描画してもらった結果と比較する実験を行った.その結果,想定していた木を描くことができた一方で,アナログとシステムで描いた樹木画に差異が見られた.

  • 西川 毅, 増山 直輝, 能島 裕介
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 543-549
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    マルチラベルデータセットを扱うマルチラベル識別問題に対して様々な手法が提案されている.先行研究である適応共鳴理論(Adaptive Resonance Theory,ART)によるクラスタリング手法を基にし,類似度尺度にCorrentropy-Induced Metric(CIM)を用いたCIM-based ART for Multi-Label Mixed Data(CA-MLMD)は,入力データに応じて識別器として使用するノードを自律適応的に生成し,新規データおよびラベル情報を継続的に学習可能な手法である.また,数値属性とカテゴリカル属性の両方を保持する量質混在データセットにも対応している.しかし,従来手法ではカテゴリカル属性の学習において,ノードの周辺に存在する局所的なデータ点群の影響を強く受けるため,識別性能が低下している可能性がある.本研究では,CA-MLMDを基に各ノードの持つカテゴリカル属性を用いた重みを使用し,データ全体のカテゴリカル属性の特徴も加味することで局所的な影響を緩和しながら学習を行うCA-MLMD-weight(CA-MLMD-w)を提案する.また,実世界データセットを用いた数値実験により提案手法の有効性を示す.

  • 佐藤 唯人, 宮本 友樹, 片上 大輔, 田中 貴紘
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 550-554
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,運転支援エージェントの褒めを含む指導による運転行動の改善の効果を検討することを目的とする.ドライビングシミュレータと視線計測装置によって,運転支援エージェントの褒め指導を体験する前後のドライバの安全確認行動の変化を調査する被験者実験を行った.実験の結果,褒めあり指導は,褒めなし指導よりも改善,持続された場面数が多く,安全確認行動改善の可能性が示唆された.

  • 藤本 雄紀, 日下 恭輔, 田部田 晋
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 555-559
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    のと鉄道のと里山里海号は,世界農業遺産「能登の里山里海」を走る土日祝に運行している観光を目的とした列車である.旅行会社と連携した団体旅行客の利用と比較し,個人利用客の利用数は年々減少傾向にあり,個人客に向けた情報発信が課題になっている.これまで,パンフレットや動画などによるプロモーションを実施しているものの十分な効果を得られておらず,より臨場感があり,記憶に残る情報発信手段を検討する必要がある.そこで本研究では,乗車の疑似体験による観光意欲の向上を目的としたVRシステムを開発した.本システムの評価では,利用者の記憶に残る情報提供手段のひとつとなり,観光列車の利用意向の向上に寄与する可能性が示唆された.

  • 坂井 俊介, 長谷川 達人, 越野 亮
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 560-564
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    産業用画像における異常は論理的な異常と構造的な異常に分類される.論理的な異常は物体の欠損や個数の過剰,配置のミスの総称であり,一方で構造的な異常は汚れや傷,異物の混入などを指す.従来の正規化フローによる異常検知手法では,特徴マップの局所的な情報を加味して変数変換が行われる. これらの手法は一般に,構造的な異常に関しては検出性能が高い一方で,論理的な異常の検出を苦手とする.本研究では,この問題に対処するために,正規化フローに自己注意機構を導入して変数変換時に特徴間の関係性を捉えるMulti-head Self Attention Flow(MSAFlow)を提案する.異常検知のベンチマークデータセットであるMVTecLOCOを用いて,提案手法と従来の正規化フローを比較した結果,全カテゴリの平均AUROCで5%の性能向上を達成した.

  • 小西 豪, 増山 直輝, 能島 裕介
    原稿種別: ショートノート
    2024 年 36 巻 1 号 p. 565-570
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    多目的ファジィ遺伝的機械学習は,進化型多目的最適化により,識別性能最大化とモデルの複雑さ最小化を考慮したファジィ識別器集合を効率的に生成可能である.しかし,多目的ファジィ遺伝的機械学習は,最適化の過程で,複雑さ最小化の方向に強いバイアスを示すため,識別性能の高い識別器が生成されづらい.従来研究では,このバイアスの緩和のため,まず識別性能のみに対する単一目的最適化を行い,次に識別性能と複雑さに対する多目的最適化を行う2段階ファジィ遺伝的機械学習が提案されている.また,2段階ファジィ遺伝的機械学習で,より優れた識別器集合を得るために,アーカイブ個体群の利用が提案されている.しかし,アーカイブ個体群の利用が,2段階ファジィ遺伝的機械学習により得られる識別器集合に与える影響は十分に調査されていない.本研究では,多種多様な実世界データセットによる数値実験を通して,識別器集合に与える影響を調査する.

一般論文
原著論文
  • 仁科 京介, 藤田 茂
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 1 号 p. 571-581
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    強化学習の手法には,環境を単純で正確なダイナミクスモデル(世界モデル)として学習し,コンパクトな潜在空間で試行錯誤する手法がある.しかし,再構成誤差を用いて世界モデルを学習しているため,視覚環境が複雑になると,性能が低下する問題がある.これに対して,対照学習で世界モデルを学習させることで,視覚環境が複雑でも性能の低下を軽減した.しかし,バッチサイズを小さくすると性能が低下する課題が残されている.本研究では,非対照学習を用いて世界モデルを学習する手法を提案する.これにより,視覚環境が複雑なタスクにおいても性能が低下する課題を解決することができると考えた.また,視覚情報に関する頑健性を高めるためにタスクには関係のない背景情報による影響を抑制する損失関数を導入した.その結果,通常の背景の場合,6タスク中4タスクで,背景を複雑化した場合は,6タスク中5タスクで提案手法の方が高い性能を示した.

  • 松下 真也, 村瀬 亮太朗, 高瀬 治彦, 高野 敏明, 友次 克子
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 1 号 p. 582-588
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    本研究では,少数言語のテキストを対象としたNPYLMによる単語分割を検討する.少数言語のテキストは言語に関する事前知識・データ量が不足しており,従来の単語分割法の適用が難しい.特に,従来法の一つであるNPYLMは事前知識を用いずにテキストの単語分割を行うが,学習データが不足する場合はテキストを過剰に分割しがちであった.そこで,学習データが不足するNPYLMによる過剰分割を改善するため,NPYLMの2段階適用を提案した.提案法では,与えられたテキストを1回目のNPYLMで学習し,置き換え候補を得る.続けて,与えられたテキスト内の置き換え候補の語を1文字に置き換える.最後に,2回目のNPYLMの学習を行い過剰分割を軽減した分割結果を得る.実験より,適切に置き換え割合を設定することで英語,日本語,少数言語の過剰分割の改善を確認した.結果より,提案法は言語に依存せず過剰分割を軽減できるといえる.

  • 坪谷 朱音, 甲野 佑, 高橋 達二
    原稿種別: 原著論文
    2024 年 36 巻 1 号 p. 589-600
    発行日: 2024/02/15
    公開日: 2024/02/15
    ジャーナル フリー

    人間や動物は,試行錯誤を通じた学習経験を類似状態へ汎化し,特定の達成レベルを目指すことで複雑な環境を効率的に探索する.その際,選択肢の特徴や各時点の状況といった文脈情報を扱うための環境のモデル構築も同時におこなう.本論文では,文脈を考慮する意思決定モデルとして Regional Linear Risk-sensitive Satisficing(RegLinRS)を提案する.RegLinRS は人間や動物の探索の仕方とリスク態度を取り入れた,高い効率性を持つアルゴリズムである.採餌環境を表現した人工データセットを用いた文脈付きバンディット問題のシミュレーションにより,提案手法の性能と探索効率を評価する.さらに,エージェントの生存という目的に対する探索プロセスの合目的性を分析する.提案手法がエージェントの期待損失を抑えつつ,素早く生存ラインを確保できる生態学的合理性を持つことが示された.

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