抄録
本論文では,X線撮影の撮影条件設定に必要な腹厚を,三角型ファジィ関数を用いたファジィ推論によって推定する方法を提案する.医学における放射線領域の X線撮影では,撮影条件(管電圧,管電流,X線照射時間)は,X線写真のコントラスト,粒状性に大きな影響を与えている.また,体型の違いによる腹厚は,その設定に大きな影響を与えている.腹厚の変化による撮影条件の設定は,腹厚計による実測値から設定しているか,自動露出制御(Automatic Exposure Control:AEC)を使用する方法があるが,前者においては,ディジタル技術の出現で余り正確に行われなくなっている現状がある.そこで,肥満度,体格指数などの体型(身長・体重)の情報よりファジィ推論を行い,その推論値と腹厚計による実測値との相関関係より腹厚の推定ができるか検討する.腹厚(正面)は Body Mass Index(体重 /身長2.0:ファジィ推論値)と,腹厚(側面)は1.5 Power Index(体重 /身長1.5:ファジー推論値)と良く相関し,その一次回帰式より X線撮影に必要な腹厚の推定が可能であることを示す.