知能と情報
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原著論文
XBRLを利用した財務分析システムとそのインタラクション支援
稲村 博央庄司 裕子
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2009 年 21 巻 3 号 p. 338-347

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抄録

財務分析において企業のリスクや経営分析を行う研究は数多くあるが,既存の財務分析システムはユーザの特性を考慮しておらず,ユーザとシステム間のインタラクションを考慮したシステムになっていない.財務分析には財務分析角度という分析角度があり,一般的にそれに基づいて財務分析を行う.ここから財務分析は特定の目的を最初から持っているように思われるが,仮にユーザの要求する財務データが決まっていてもそこから読み取れる情報には様々なものがあり,財務分析を行う人自身の気付きにより得られるものである.すなわち,探索的データ分析(exploratory data analysis)の側面を持っていると言える.探索的データ分析では探索過程を通じてユーザ自身が徐々に自らの情報要求を把握したり,探索の途中で情報要求そのものが変化・変質したりする可能性も多く,このような場合,ユーザはインタラクションを繰り返すことで自らの情報要求を徐々に顕在化させ,精緻化させていくことになる.そこで,本研究では XBRL を利用した Web ベースの財務分析支援システムと,財務分析支援システムにおけるユーザインタラクション支援を行うシステムを構築する.3つの財務分析角度に応じ,Model+Others というインタラクションデザインを提案し,実装した.これら Model+Othersは財務分析角度における重要度と関係性,指標同士の関係性から3つの階層に財務指標を分け,「Model」とし,それ以外の部分を「Others」と位置付けた.これらのモデルを適用することでインタラクション支援を可能とすると考える.ユーザモデルを適用した場合と適用しない場合で,利用ユーザにどのような影響を及ぼすかを検証し,ユーザの利用ログをエスノ的観点から詳細に追跡し分析した.その結果,提案した「Model+Others」を利用したことでインタラクション支援が行われ,ユーザの要求情報の変化と気付き,およびユーザごとの特徴的なインタラクション結果を観察することができた.

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© 2009 日本知能情報ファジィ学会
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