知能と情報
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原著論文
リレーションシップ・マーケティングにおける長期・短期戦略の効果比較による知見の獲得について
東田 巌秀領家 美奈
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2010 年 22 巻 2 号 p. 190-202

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抄録
リレーションシップ・マーケティング(RM)は80年代から発展し,広く受け入れられてきたが,RMにおける最も重要な概念の「Trust(信頼)」が,製品販売会社の営業成果への影響度は明確では無い.実証研究では,逆にTrustの営業成績に対する貢献度は低いという報告がされている.本稿の目的は,Buyer-Sellerの2者関係において,TrustがSellerの営業成績に与える影響を分析し,営業戦略策定における新しい知見を獲得することである.WatkinsとHillはそうしたRMの有効性を確認するために従来の実証研究ではなく,Multi Agent-based Simulation(MAS)を用いて,3タイプの販売戦略が営業成績にどう影響するのかを分析した.しかしWatkins及びHillのモデルでは,販売会社の営業部門が長期的に戦略を変更しないという仮定が含まれており,現実への適応に課題がある.本稿ではWatkinsとHillのモデルを拡張し,営業部門が短期的に販売戦略を変更出来る場合における,Trustの営業成績への貢献について観察する.本稿では提案モデルを用いたシミュレーションにより,短期的指向に基づく販売戦略を営業部門が実施した場合,Trustの営業成績への好影響が阻害されること,その阻害を回避するためには営業部門がより広い顧客との関係構築が必要なことが示される.
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© 2010 日本知能情報ファジィ学会
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