抄録
情動は,動物が生存していく上で非常に重要な要素であり,社会的な意思決定にも関係していると考えられている.本論文では,恐怖情動に基づく利己的な判断による社会的行動の創発を検証するために,強化学習と情動学習によって学習した価値に基づいて行動選択を行う意志決定法を提案する.強化学習ではタスクを達成するための行動規範を学習し,情動学習では環境からの入力に対する情動的な価値を学習する.自身に対する不快を回避するという情動の割り込み機能を模擬した意思決定では,強化学習と情動学習によって得られた価値を用いて,他のエージェントや状況に合わせて自身の行動を調整する.目標探索問題のシミュレーション実験の結果,提案手法を用いたエージェントが社会的行動である協調行動を創発すること,環境変化への適応性を有することを確認した.