抄録
インタラクティブECフィッティングは,補聴器の信号処理パラメータをユーザの好みに合うように設定できる有効な手法である.しかし,ユーザの評価揺らぎとECの進化演算により,不快音が生成されることがある.また,ユーザの繰り返し評価を要するためフィッティングに時間がかかる.そこで本研究では,ユーザから事前に得た音量の好みに基づいて設定候補を自動的に評価し,望ましい設定候補のみをユーザに提示する改善手法を提案する.我々は改善手法を実装し,ユーザが評価しない設定候補の最適な個数,および,改善手法の有効性を調べるシミュレーション実験を行った.インタラクティブECフィッティングでは一般に,ユーザが評価する設定候補の個数を20に設定するが,この20に対して,我々の実験ではユーザが評価しない設定候補の個数を10にすると改善手法の性能が最も高かった.この個数のもと,改善手法は評価値の分散を有意に低下させ,外れ値である不快音の除去効果が示唆された.また,改善手法はEC収束を有意に高速化し,フィッティング時間の短縮も示された.今後は被験者を用いた実用的な実験を行い,改善手法がユーザの負担を軽減するかを調べたい.