2013 年 25 巻 1 号 p. 23
脳機能画像解析におけるMVPAは,Multivariate Pattern Analysisの略であり,特にfMRI装置による脳機能計測画像(3次元BOLD画像)より得られるVoxel値を用いた脳機能解析に用いられることが多いため,Multi-voxel Pattern Analysisと呼ばれることもある.脳機能解析では,被験者(通常はヒト)に刺激(例えば,痛み,画像,音声などのイベント)を与えた際の脳活動(ボクセル値)と刺激の内容との相関を,一般線形モデル(GLM)などを用いて推定するが,これまで個々のボクセルに対して単変量解析を行うことが一般的だったものを,MVPAは複数のボクセルを変量として多変量で行うようにしたものである.これまで,PET(陽電子断層撮影法)などの手法においてボクセル解像度がセンチメートル単位だったことから,注目脳領域(ROI)のボクセル値と刺激変数の間の単変量解析が広く用いられてきた.fMRIの解像度向上(ミリメートル単位)で多くのボクセル値の詳細な計測が可能となり,ある脳機能に対して複数のボクセル値を得ることができ,MVPAが有効な手法として用いられるようになった.MVPAを用いることで,GLMなどの多変量解析手法だけでなく,サポートベクタマシン(SVM)などの多次元変数を入力とする機械学習手法による解析も用いられるようになり,脳神経科学の研究のみならずブレインコンピュータインタフェース(BCI)などへの応用の道も開けている.
[1]J. V. Hexby.,“ Multivariate pattern analysis of fMRI: The early beginnings”, NeuroImage, Vol.62, pp.852-855, 2012