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概念地図完成法(concept map completion method)
皆川 順
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2015 年 27 巻 6 号 p. 202

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抄録

概念地図法(concept mapping)において,地図全体の作成を求めず地図の一部に空所を作り,そこに適切な概念を記入して概念地図を完成させる方法である.ここで概念地図法とはNovak,J.D.が考案した認知構造の外在化法並びに学習支援方略であり,概念群を上位概念から下位概念へと配列し,各ノードの位置にある概念間の関係を線(リンク)で結び,かつリンク上に意味の説明(リンクラベル)を記入することによって完成する.認知心理学における知識表象技法に似るが,基本的に理科教育における学習支援が目的とされる.その後,理科のみならず種々の領域において応用が試みられている.皆川(1997)は概念地図法においては概念間の関係は基本的に決定しているため,むしろ穴埋め課題とした方が概念間関係の把握はより優れる場合があること,さらに空所の割合は全体の50%位の場合が認知構造の再体制化に最適であることを見出し,これを概念地図完成法(concept map completion method)と名づけた.この方法はまた,我が国における通常の小中高校の授業時間を考慮する意味をも有する.即ち,授業時間は通常45~50分ほどであり,Novakの主張する概念地図法の実施自体が困難な状況にある.

しかし穴埋めは基本的に認知構造の全体的変容を狙うものであり,時間短縮や単なる機械的記憶を奨励するものではない.事実,この未完成概念地図の完成方略に対して学習者が機械的記憶で臨んだ場合,挿入された概念は単に名辞のみが記憶され易く,概念の内包や外延の理解と記憶は成立しがたい.すると概念群の全体的な把握も困難になり,認知構造の全体的変容という当初の目的達成は困難となる.概念地図完成法においても,認知構造変容や学習支援への成否を決定する主要な独立変数は,学習者が新しい内容を学ぶのに必要な構造化された知識を有している度合いであることが確認されている.

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© 2015 日本知能情報ファジィ学会
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