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用語解説
メビウス反転(Möbius Inversion)
高萩 栄一郎
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2016 年 28 巻 1 号 p. 16

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抄録

メビウス反転は,ファジィ測度(集合に値を割り当てる集合関数の一種)の別表現である.ファジィ測度μは,複数の要素が集まった効果などを表す.例えば,1時間あたりの作業員aの作成量10kg,μ({a})=10,bはμ({b})=15,2人が協力し単独の和より5kg多いμ({a,b})=30のような非加法的な関係μ({a,b})⋛μ({a})+μ({b})を表現できる.

メビウス反転δは,ファジィ測度μの増分をとりだす集合関数である.単独の増分δ({a})=10,δ({b})=15とa,b協力の増分δ({a,b})=5となる.ファジィ測度μ(A)の値は,μ({a,b})=δ({a})+δ({b})+δ({a,b})のように単独の増分と協力の増分の合計で,μ(A)=ΣB⊆Aδ(B)となり,集合Aのファジィ測度の値は,その部分集合のメビウス反転の値の合計となる.逆に,ファジィ測度からメビウス反転は,δ(A)=ΣB⊆A(-1)(n-m)μ(B)と定義されている(n,mは,それぞれ集合A,Bの要素数).3人の作業員(a,b,c)の協力による増分は,δ({a,b,c})=μ({a,b,c})-μ({a,b})-μ({a,c})-μ({b,c})+μ({a})+μ({b})+μ({c})となる.

ファジィ測度とメビウス反転の集合関数は1対1対応するので,ファジィ測度をメビウス反転で解釈したり,メビウス反転からファジィ測度を求めたりすることができる.また,ゲームの理論など使われるシャプレィ値は,要素数(人数)に応じたメビウス反転の値の合計で表現できる.3人の場合の作業員aのシャプレィ値は,δ({a})+(1/2)[δ({a,b})+δ({a,c})]+(1/3)δ({a,b,c})となり,各増分をその集合の要素の作業員で分けるという解釈になる.逆にファジィ測度の単調性制約(A⊆Bならばμ(A)≤μ(B))はメビウス反転では表現しづらい.

メビウス反転を使ったショケ積分は,入力値をh(a),h(b),…とすると,ΣA∧x∈Aδ(A)となる.2要素の場合のh(a)δ({a})+h(b)δ({b})+min(h(a),h(b))δ({a,b})のように入力値を降順に並べ替えずに計算できる.

メビウス反転の数学的な解説は,本誌10巻2号,16巻4号にある.

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© 2016 日本知能情報ファジィ学会
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